【ウイスキーを知る】蒸留について|蒸留方法の違いから解説
ウイスキーに限らず、蒸留酒には蒸留方法が2パターンあります。それは、伝統的な単式蒸留と近代的な連続式蒸留です。
どちらの蒸留方法で造られたかがウイスキー造りにおいて重要なポイントとなるのですが、どのような違いがあるのでしょうか?今回は、蒸留方法の違いについて解説していこうと思います。
単式蒸留
伝統的な製法である単式蒸留。蒸留するごとに毎回中身を入れ替えるシンプルな構造の蒸留器が使われます。ウイスキー造りにおいては、「ポットスチル」と呼ばれる銅製のヤカンのような蒸留器を使うことが一般的です。
単式蒸留の歴史は古く、紀元前から行われていました。所説ありますが、1172年には、アイルランドにてウイスキーの前身となる「ウスケボー」が造られていたと言われています。つまり、少なくとも1172年よりも前からシンプルな単式蒸留の技法は伝わっていたと想像できます。
以降ウイスキーは、単式蒸留で造られてきました。そして20世紀には「モルトウイスキーは銅製のポットスチルの使用が義務」と法により定義化されます。
単式蒸留で造られたウイスキーは、原料の個性が残りやすく、複雑な味わいに長い余韻が特徴です。一方、大量生産には不向きで、クセのある酒質となることがあります。
シングルモルトのように個性的でこだわりの少量生産のウイスキーに向いている製法です。ポットスチルでは蒸留回数が増えるほど軽い酒質となっていきますが、スコットランドは2回蒸留が主流、アイルランドは3回蒸留が主流となっています。
ポットスチルで作られるウイスキーの例
- モルトウイスキー
- アイリッシュポットスチルウイスキー
連続式蒸留
連続式蒸留は、原料を投入し続ければ、連続的に蒸留し続ける近代的な蒸留方法のこと。数十層にもなる塔のようなスチルを複数本使い蒸留する大規模なシステムです。この近代的なシステムが実用化されたのは、19世紀ごろ。1831年にアイルランドの元税監査官”イーニアス・コフィーが2塔からなる連続式蒸留機を発明し特許を取得しました。
単式蒸留では、蒸留回数が増えるほど軽い酒質となると述べましたが、連続式蒸留機は棚の数だけ単式蒸留しているのと同等の効果を得ることができます。そのため、クリアでクセのなくキレのある酒質となる傾向があります。また、連続式蒸留は大量生産することが可能。
連続式蒸留機の誕生によってモルトウイスキーの「クセの強さ」と「大量生産できない」欠点を補う「グレーンウイスキー」が生まれたのです。
主に連続式蒸留で作られるウイスキーの例
- グレーンウイスキー
- バーボンウイスキー
- ライウイスキー
蒸留方法の違いによってウイスキーの味わいが大きく変わる
単式蒸留で作られるモルトウイスキーは、香りや味わいが深く個性的な酒質となる傾向があります。対して、連続式蒸留で作られるグレーンウイスキーはクリアでキレのある酒質が特徴です。
また、単式蒸留は大量生産ができずコストがかかってしまいますが、連続式蒸留ならその欠点を補うことができます。この2つのウイスキーをブレンドすることで、お互いの利点と欠点を補い合うブレンデッドウイスキーが誕生しました。
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ブレンデッドウイスキーの誕生によって、スコッチウイスキーは大きく発展。世界中で飲まれるお酒となっていったのです。