コラム

2025.09.16

なぜウイスキーからフルーティな香りを感じるの!?|果実香のルーツについて

  • ウイスキー知識

ウイスキーをグラスに注いだとき、ふわりと広がるフルーティな香り。その香りはリンゴや洋ナシ、バナナ、柑橘類など、まるでフルーツバスケットのように多彩です。なぜ蒸留酒であるウイスキーに果実のような香りが宿るのでしょうか?
この記事では、フルーティな香りの起源を探るとともに、香りを楽しめるウイスキーもご紹介します。

ウイスキーからフルーティな香りを感じる理由

発酵中に誕生

ウイスキー造りにおける香りの生成は、発酵段階から始まります。麦汁に酵母を加えて発酵させると、アルコールとともにエステル類やアルデヒドなど、さまざまな香気成分が生成されます。これらはフルーツの香りの主成分であり、例えば酢酸イソアミルはバナナ、酢酸エチルはリンゴのような香りをもたらします。
以下の表は、代表的な香気成分とその香りの特徴をまとめたものです:

香気成分香りの例生成要因
酢酸イソアミルバナナ酵母の代謝産物
酢酸エチル青リンゴアルコールと酢酸の反応
カプロン酸エチル洋ナシ発酵中のエステル反応
フェネチルアルコールバラのようなフローラル酵母による副産物

発酵温度や酵母の種類、発酵時間などによって生成される香りの成分は異なります。香りを引き出すために、蒸留所ごとに工夫を凝らしているのです。

蒸留によって凝縮

発酵で生まれた香り成分は、蒸留によってさらに凝縮されます。特にポットスチル蒸留では、ミドルカットという重要な工程があります。これは、蒸留中に出てくるアルコールの中で、香りや味わいのバランスが良い「ミドル」と呼ばれる部分だけを取り出す作業です。蒸留してから最初に出てくる液体(焼酎で言うところの「ハナタレ」)には、非常に華やかで果実香の強い成分が多く含まれる傾向があります。そのため、蒸留所によってはミドルカットのタイミングを早めて、このフルーティさを前面に出す設計にしている場合も。
蒸留所ごとにミドルカットのタイミングが異なり、それが個性の違いとなって現れるのです。

樽熟成中の化学反応

蒸留後のニューポット(新酒)は、樽で長期間熟成されます。この過程でもフルーティな香りは深化します。樽の中では、アルコールや酸、木材由来の成分が化学反応を起こし、新たな香気成分が生まれます。特にアメリカンホワイトオークの樽からは、バニラやココナッツに加え、バナナのような果実様の香りも抽出されます。また、長期熟成によって酸とアルコールが再び結合し、新たなエステルを形成。これが熟した果実のような香りを醸し出す要因となるのです。

フルーティな香りが楽しめるウイスキー

ここでは、果実のような香りが際立つおすすめのウイスキーを3本ご紹介します。

デュワーズ12年

スコッチブレンデッドウイスキーの代表格とも言えるデュワーズ12年は、ダブルエイジ製法によってまろやかさと香りの調和が際立ちます。洋ナシやリンゴのような香りが感じられ、余韻にかけてハチミツのような甘さも楽しめます。フルーティさとコクのバランスが絶妙な1本です。

デュワーズ15年

「ザ・モナーク」の愛称を持つこのボトルは、トロピカルフルーツやシトラスを思わせる華やかな香りが特徴です。15年の熟成により奥行きのある風味が生まれ、軽やかさの中にも深い余韻が残ります。フルーティでありながらエレガントな印象を受ける逸品です。

ロイヤルブラックラ12年

シングルモルトながらも非常にフルーティな香りを持つロイヤルブラックラ12年。熟したプラムやアプリコット、わずかにミントのような清涼感も感じられます。香り高い一杯を求める方におすすめです。

フルーティな香りはウイスキーの魅力の一つです。発酵・蒸留・熟成という三段階を通じて生まれる香りの奥深さは、飲むたびに新たな発見をもたらしてくれます。今回ご紹介したウイスキーを通じて、果実香の魅力をじっくり味わってみてはいかがでしょうか。