menu

コラム

2025.11.28

ウイスキ-用語「シェリー樽」とは?

  • ウイスキー知識
  • X
  • Instagram

ウイスキー好きなら一度は耳にしたことがある「シェリー樽熟成のウイスキー」。その魅力は、単なる熟成手法に留まらず、濃厚で複雑な香味をウイスキーに与える点にあります。

モルトファンからは特に人気で、ブレンデッドウイスキーの原酒としても重宝されるほか、後熟(ウッドフィニッシュ)によって深みを加える手法としても用いられます。

今回は、この「シェリー樽」について深く解説させていただきます。

シェリー酒とは?

まず「シェリー酒」とは、スペイン・アンダルシア地方で造られる酒精強化ワインのこと。ワインにスピリッツを加え保存性を高めたもので、シェリーが保管に使用した樽が伝統的にスコッチウイスキーで使われてきました。

シェリー酒は特に以下の3つを覚えておくと理解が深まります。

生産都市

・へレス・サンタマリア・サンルーカル
シェリー酒はこれらの地域の白ブドウを用い、醸造所(ボテガ)で熟成しなければ「シェリー」と名乗れません。

ブドウ品種

・パロミノ種・ペドロヒメネス種・モスカテル種
特にパロミノ種は全体の約95%を占め、他の2種はシェリーの甘口タイプとして個性を生みます。

主な種類

・フィノ・アモンティリチャード・オロロソ
産膜酵母「フロール」の有無によって酸化するかしないかが味わいに大きく影響します。

シェリー樽とは?

実はウイスキーで使われる「シェリー樽」は、実際にはシェリー酒の熟成樽ではありません。シェリーはソレラシステムという継ぎ足し方式で熟成されます。そのため、シェリー酒の熟成樽は常に満杯状態。中には100年以上も使われている樽があるほどです。では「シェリー樽」とは一体何なのでしょうか?


実は「シェリー樽」の正体は、もともとは使われなくなった「シェリー運搬用の樽(ワンウェイ樽)」でした。ウイスキーに重税が課せられていたいわゆる「スコッチ密造時代」。蒸留所が密造ウイスキーをシェリー運搬用の樽に隠していたら熟成していたことから、樽熟成が始まったと言われています。現代ではシェリー酒を樽で運搬することが禁止されているため、シェリー樽の入手は容易ではありません。

ウイスキーメーカーは自前で樽を用意し、シェリー醸造所で新たにシェリー酒をシーズニングした樽がウイスキ-用に使われています。

シェリーシーズニングとは?


ウイスキーではイギリスがシェリー酒の主要消費国だったため、伝統的にシェリー樽が使われてきました。当時はシェリーがワンウェイ樽で運搬されていたため、イギリス国内にシェリー樽が数多くありましたが、1980年代にシェリー酒の品質管理のため、樽での運搬が禁止されます。そのため、ウイスキー蒸留所やメーカーが樽を発注・自前で用意し、シェリー醸造所でシェリー酒を一時保管。その樽を使ってウイスキーを熟成させるようになりました。これが今ウイスキー界で主流となっている「シェリーシーズニング」と呼ばれるものです。

《シェリーシーズニングの流れ》

ウイスキーメーカーが樽工場へ依頼し、新しい樽を用意する。

委託先にシェリー醸造所へ樽を持ち込み、熟成庫でシェリー酒の一部をシーズニングさせてもらう。

一定期間熟成後、そのシェリー酒を払い出し、ウイスキーメーカーへ輸送。

ウイスキーの熟成樽として使用する。

払いだされたシェリー酒はシェリー酒の法律から外れてしまうため、シェリー添加用のスピリッツなどに加工される。


基本はオロロソでシーズニングを行いますが、現在ではウッドフィニッシュ用にさまざまなシェリー酒の樽がウイスキーの熟成に使用。シェリー樽も多彩さを持つようになったといえるでしょう。

例:ロイヤルブラックラ18年→パロコルタド(希少なシェリー酒)の樽を使用。

濃厚でまったりと楽しめるシェリー系ウイスキーは、晩酌にぴったりです。シェリー樽熟成の奥深さを知ると、ウイスキーの味わいはさらに豊かに感じられるはず。

ウイスキー選びの際は、ぜひ「シェリー樽」のニュアンスに注目してみてください。